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防災用の非常食を買って、押入れの奥にしまって、次に開けたときには賞味期限が切れていた。
……あるあるだと思います。しかも5年保存の乾パンやアルファ米は、いざ食べようとすると「これ、食べたくないな」となりがち。結局、誰も食べないまま処分することになります。
この「買っては捨てる」を終わらせる方法が、ローリングストックです。
農林水産省もすすめている考え方で、特別な非常食を買う必要がありません。いつも食べている食品を、少し多めに買っておくだけ。
この記事では、
- ローリングストックとは何か
- 特別な非常食を買うよりうまくいく理由
- 始め方の4ステップ
- 具体的な備蓄食品リスト
- 続けるための収納と仕組み
- 停電・断水でも作れる簡単な食事
- やりがちな失敗
をまとめました。防災グッズ全般については別記事で扱っているので、ここでは食べものに絞ってお話しします。
ローリングストックとは
農林水産省が家庭備蓄ポータルですすめている方法で、一言でいうとこういう仕組みです。
普段の食品を少し多めに買い置きし、古いものから日常的に食べ、食べた分だけ買い足す。
こうして常に一定量の備蓄がある状態を保つ方法。
「備蓄用の棚」を別につくるのではなく、いつものパントリーの在庫を、ちょっと厚くしておくイメージです。
図にすると、こんな循環になります。
- 少し多めに買う
- 古いものから食べる
- 食べた分を買い足す
- 1に戻る

これだけです。
従来の「非常食を買う」との違い
| 非常食を買いだめ | ローリングストック | |
|---|---|---|
| 買うもの | 専用の長期保存食 | いつも食べているもの |
| 価格 | 高め | 普段の食費の範囲 |
| 期限切れ | 起きやすい | 起きにくい |
| 味の確認 | 食べたことがない | 食べ慣れている |
| 手間 | 買うときだけ | 少しの意識が続く |
長期保存食が悪いわけではありません。ただ、主軸をローリングストックに置いて、足りない部分を長期保存食で補うのが現実的です。
特別な非常食より、ローリングストックが確実な理由
理由は3つあります。
1. 食べ慣れないものは、非常時ほど食べられない
これがいちばん大きな理由です。
災害時は強いストレスがかかります。そんなときに、食べたことのない乾パンやアルファ米を出されても、喉を通らないことは十分にあり得ます。小さいお子さんがいる場合はなおさらで、口をつけてもらえない可能性が高くなります。
普段から食べているレトルトカレーやパックごはんのほうが、はるかに確実なのです。
2. 「必要なもの」は数年で変わる
家族構成、体調、食の好み。5年もあれば、食べたいもの・食べられるものは変わります。小さいお子さんがいるご家庭なら、離乳食から幼児食への変化はもっと急です。
5年保存の非常食を買っても、5年後の自分たちに合っているとは限りません。回転させ続けるローリングストックなら、今の暮らしに自然についてきます。
3. アレルギーや持病の食事制限に対応できる
市販の非常食セットは、アレルギーや塩分・糖質の制限がある人には使えないことがほとんどです。普段から食べられると確認できている食品をそのまま備蓄に回せるローリングストックなら、この心配がありません。
ローリングストックの始め方 4ステップ
STEP1|何日分必要かを決める
まず目標を決めます。農林水産省の家庭備蓄ポータルが示す目安は最低3日分、できれば1週間分。大規模災害ではライフラインの復旧に1週間以上かかる可能性があるためです。
いきなり1週間分は大変なので、まず3日分から始めるのがおすすめです。
水は食品とは別枠で考えます。同じく農林水産省の目安で、1人1日3リットル。2人暮らしの3日分なら18リットル、4人なら36リットル(2Lペットボトル18本)です。トイレや手洗いに使う生活用水はこれとは別に要ります。水の考え方は、防災グッズリストの記事にくわしくまとめています。
STEP2|「いつも食べているもの」から選ぶ
ここが最重要です。新しいものを買うのではなく、冷蔵庫とパントリーを見て、実際に食べているものを書き出すところから始めます。
選ぶ基準は3つ。
- 常温で保存できる
- 加熱しなくても食べられる、または少しの加熱で食べられる
- 賞味期限が3か月以上ある
3つ目がポイントです。ローリングストックは「賞味期限が長いものを選ぶ」のではなく、「回転させられる程度に長いものを選ぶ」のがコツです。
STEP3|いつもより1つ多く買う
一気に買いそろえる必要はありません。次の買い物から、いつも買っているものを1つずつ多めに買う。それだけで始まります。
たとえば、
- レトルトカレー … いつも3個 → 4個
- パックごはん … いつも3個 → 4個
- カットわかめ … いつも1袋 → 2袋
数か月続けると、自然に3日分の備蓄ができています。セールやポイント還元日にまとめて買い足すと、家計への負担も抑えられます。
STEP4|古いものから食べて、食べたぶんを買い足す
ここが「ローリング(回転)」の部分です。
うまくいかない家庭の多くは、買うのは続くけれど食べるのが続かないというパターンです。これを解決する仕組みは後述します。
ローリングストックの食品リスト
具体的に何を置けばいいのか、カテゴリー別に整理しました。
主食
- パックごはん(そのままでも食べられます)
- 無洗米
- パックのおかゆ、雑炊
- レトルトのパスタ、そうめん
- シリアル、グラノーラ
- ロングライフパン(常温で数か月もつパン)
- ホットケーキミックス
主食のなかで唯一、ローリングストックに乗せにくいのがアルファ化米です。賞味期限が数年単位で長いぶん、普段の食事で消費する機会がほとんどないためです。
ただ、その長さは弱点の裏返しでもあります。パックごはんが数か月で切れていくのに対して、アルファ化米は棚おろしの回数そのものを減らせます。回すのは普段の食品、置きっぱなしにするのはアルファ化米と役割を分けて、2階建てで持っておくのが現実的です。
年2回の棚おろしのときに、期限が近づいたぶんをキャンプや休日の昼食で食べてしまえば、置きっぱなしでも無駄になりません。
主菜・たんぱく質
- レトルトカレー(辛さ違いで数種類あると飽きにくい)
- ツナ缶、さば缶、焼き鳥缶
- コーンビーフ、ミートボール
- 大豆ミート、蒸し大豆パック
- 魚肉ソーセージ(常温保存できて、そのまま食べられる)
- 高野豆腐、乾燥わかめ
野菜
不足しやすいのがここです。意識して入れておくと安心です。
- 野菜ジュース、トマトジュース
- コーンの缶詰、トマト缶
- 乾燥野菜、フリーズドライの味噌汁
- 干し芋、ドライフルーツ
- 常温で日持ちする根菜(じゃがいも、玉ねぎ、かぼちゃ)
小さいお子さんがいる場合は、ミルクやベビーフードも同じ考え方で回せます。ただし月齢が変わると中身ごと入れ替えが必要になり、点検のサイクルが他の食品と違ってきます。年齢別に何を足すかは、別の記事にまとめました。
飲み物
- 保存水、ミネラルウォーター
- 麦茶(ペットボトル)
- ロングライフ牛乳、豆乳
- 粉末のスープ、ココア
お菓子・デザート
「不要不急」に見えて、実はいちばん効くカテゴリーです。
不安な状況で好きなお菓子を食べられることの意味は、思っているより大きいです。
- チョコレート、ビスケット
- 個包装のせんべい、クッキー
- 果物の缶詰、ゼリー飲料
- 栄養補助バー
調味料・その他
- 塩、砂糖、しょうゆ、めんつゆ
- マヨネーズ、ケチャップ
- はちみつ(1歳未満には与えないでください)
- ラップ、アルミホイル、キッチンペーパー
- 使い捨ての紙皿・紙コップ・割り箸
ラップは特に重要です。断水中は皿を洗えません。皿にラップを敷いて使えば、食べ終わったあとはラップを捨てるだけで済みます。
熱源
食品ではありませんが、セットで用意しておきたいものです。
- カセットコンロ
- カセットボンベ
停電するとIHも電子レンジも使えません。カセットコンロが1台あると、温かいものが食べられます。温かい食事は、想像以上に気持ちを支えてくれます。
何本いるのか。カセットこんろメーカーの岩谷産業は、大人2人分について、用途別に1日あたりの必要本数を試算しています。レトルト惣菜・パックご飯、カップ麺、温かい飲み物、洗浄や殺菌のためのお湯まで含めると、1日あたり25℃で1.1本、10℃で1.7本。これを1週間分に換算すると、気温25℃で約7.7本、10℃で約11.9本になります(同社の公表値をもとにした計算)。寒いほど本数が増えるのは、ガスの気化と沸き上がりにかかる時間が気温に大きく左右されるためです。
意外と本数がいります。大人2人なら3日分で4〜5本、1週間分で8〜12本が目安です。岩谷産業はボンベの使用期限を製造から約7年としています。これも鍋の季節に使って入れ替えるとちょうどよく回ります。
続けるための仕組み3つ
ローリングストックの本当の難所は、始めることではなく続けることです。ここは気合いではなく、仕組みで解決できます。
1. 収納は「一列に並べて、手前から取る」
奥に押し込むと、古いものが永久に奥に残ります。
おすすめは、カゴや引き出しに一列で並べ、新しく買ったものは必ず一番奥に入れる方法。手前から取るだけで、自動的に古いものから消費されます。コンビニの陳列と同じ考え方です。
段ボールのまま積むのは避けたほうが安全です。中身が見えないものは、存在ごと忘れます。
2. 「金曜日は備蓄ごはんの日」を決める
食べる日をあらかじめ決めてしまうのが、いちばん確実です。
たとえば「週末は疲れているのでレトルトの日」と決めれば、備蓄を回しながら、家事もラクになります。防災のためというより、自分がラクをするために食べる、くらいの感覚がちょうどいいと思います。
3. 年2回の「棚おろしデー」
半年に1回、全部出してチェックする日を決めます。9月1日(防災の日)と、3月11日前後あたりが覚えやすいでしょう。
チェックするのは3つ。
- 賞味期限が近いものはないか
- 今の暮らしに合わなくなったものはないか(お子さんの年齢、体調、好みの変化)
- 世帯の人数分の3日〜1週間分があるか
スマホのカレンダーに、年2回の繰り返し予定として登録してしまうのが確実です。
記録を紙で管理するのが面倒なら、東京備蓄ナビの備蓄状況チェックリストが使えます。品目ごとに今ある数量を入れると、「0缶 / 14缶 → 0%」のように必要量に対する達成率が出る仕組みです。消費期限も一緒に登録でき、「2026年」だけ、「2026年8月」まで、と粒度を選べるので、缶詰のように年しか書いていないものでも入力できます。
一度入れておけば、半年後に開いたときに確認するのは差分だけ。棚おろしのハードルがぐっと下がります。
停電・断水でも作れる組み合わせ
備蓄があっても、調理できなければ意味がありません。加熱なし・少ない水で成立する組み合わせを挙げておきます。
加熱なしでそのまま
- パックごはん + ツナ缶 + マヨネーズ
- シリアル + ロングライフ牛乳
- ロングライフパン + はちみつ(1歳以上)
- 魚肉ソーセージ + 個包装のチーズ
カセットコンロが使える場合
- パックごはんを湯せん → レトルトカレー(湯せんに使ったお湯は洗い物や他の調理に再利用できます)
- フリーズドライの味噌汁 + 乾燥わかめ
- そうめん(ゆで汁は捨てずにスープに)
ポリ袋調理
耐熱のポリ袋に材料を入れて口を縛り、鍋で湯せんする方法です。鍋を汚さないので、同じお湯で複数の料理を続けて作れます。洗い物もぐっと減らせます。断水時にとても有効なので、一度平常時に試しておくと安心です。
使うのは、湯せんに対応した高密度ポリエチレンの袋です。ふつうの食品用ポリ袋は熱に弱いので、必ず「湯せん可」「耐熱温度」の表示があるものを選ぶと安心です。ふだんは下ごしらえや冷凍保存にも使えるので、これもローリングストックしやすいものです。
やりがちな失敗3つ
1. 気合を入れて一気に買いそろえる
3万円分まとめ買いすると、賞味期限も一斉にそろってしまいます。半年後に全部同時に期限切れ、という事態になりかねません。少しずつ買い足すほうが、結果的に期限が分散します。
2. 食べたことのないものを備蓄する
「防災食」と名のつく商品を試さずに買うのは避けたほうが安全です。必ず一度は食べてみて、口に合うかを確認してから備蓄に加えます。液体ミルクや粉ミルクも同じです。
3. 水を忘れる
食品ばかりに意識が向きがちですが、水がなければレトルトも温められません。食品と同じかそれ以上に、水の確保が優先です。
まとめ
- ローリングストックは、いつもの食品を少し多めに買い、古いものから食べて買い足す方法
- うまくいく理由は、食べ慣れたものがそのまま備蓄になるから
- まず3日分から。次の買い物で1つ多く買うだけで始まる
- 食品は常温・加熱不要・期限3か月以上で選ぶ
- 野菜とお菓子は忘れがち。意識して入れる
- 続けるコツは一列収納・食べる日を決める・年2回の棚おろし
- 水とカセットコンロもセットで
非常食を買いに行く必要はありません。今週の買い物で、レトルトカレーをいつもより2つ多くカゴに入れる。それがローリングストックの第一歩です。
防災グッズ全般(水・トイレ・持ち出し袋・置き場所)については、こちらの記事で詳しくまとめています。
小さいお子さんがいるご家庭は、年齢別に足すもののリストもあわせてどうぞ。
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参考にした情報
- 農林水産省「家庭備蓄ポータル」(備蓄日数の目安、水3L/人日、ローリングストックの考え方)
- 農林水産省「「もしも」に備える食品ストックガイド」(飲料水とは別に生活用水が必要)
- 岩谷産業「カセットボンベの備蓄について」(必要本数の試算、使用期限)
- 東京都「東京備蓄ナビ」(家族構成別の必要量シミュレーション)
※数値はいずれも公的機関やメーカーが示す「目安」です。賞味期限やカセットボンベの燃焼時間は製品により異なります。購入前に各製品の表示をご確認ください。

